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2013.8.27 「SK-II」事件

マックスファクター社の高級化粧品ブランド「SK-II」を模したロゴの原版を製造したとして、商標法違反容疑でデザイン会社社長らが逮捕される事件がありました。
事件は2つあり、それぞれ別の人が逮捕されていますが、1件目は不起訴(’13/6/11名古屋地検)、2件目は起訴のうえ有罪判決(’13/8/21名古屋地裁)となっています。いずれも原版模造という点で同じですが、後者はその後に商品販売までおこなって15万円余りの利益(裁判所曰く「高額な利益」)を得ていたとのことですので、起訴→有罪とされたのはこの点が理由かもしれません
なお、当該判決の中身は、懲役1年6月、執行猶予3年とのことですが、被害者に対して購入金額以上の示談金が支払われていたことなどから、執行猶予付きの判決となった模様です。

ところで、登録商標を模造するための原版製造につき商標法が適用され、逮捕までされたのは、今回が初めてのようです。
商標法は、商標権保護の万全を図るため、商標権侵害に結びつく予備行為を間接侵害(侵害とみなす行為)として規制しています(商標法37条)。おそらく今回は、同法37条8号(下掲)を適用したケースと思われますが、これは例えば偽ブランド品の所持(予備行為)のさらに前段階である原版製造(予備行為の予備行為)までをも侵害とみなすものです。
原版製造以外で過去に本号の適用があったかは定かではありませんが、いずれにせよ本号は活きている規定であり、今回は我が国における商標権保護の姿勢を示す点でも意義があったように思われます。

(侵害とみなす行為)
第三十七条 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
八 登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、又は輸入する行為

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2013.7.10 締め込み姿のハローキティ(博多山笠)

つい先日、「締め込み姿のハローキティに“待った”」のような見出しで、新聞やインターネットでニュースが流れました。一見、締め込み姿、言い換えればふんどし姿のハローキティのデザインが、イメージ的な問題でハローキティ側から“待った”をかけられた、という内容の記事かと思われました。
ただ、内容を見ると、締め込み姿のハローキティはデザインされていますが、その隣に「博多山笠」の文字が書かれた「タオル」の販売に対し、博多山笠振興会から“待った”がかかった、というニュースでした。「タオル」の分野で「博多山笠」という文字が振興会の会長名義で商標登録されているため、無断使用は商標権の侵害になる、ということのようです(この商品自体は発売中止になった模様)。
問題の中心は、ハローキティのデザインというよりも、「博多山笠」の商標権に関するものでした。ミスリードな見出しとの印象を持った人も多かったのではないでしょうか。

それはさておき、「博多山笠」(正式には「博多祇園山笠」というようです)という有名なお祭りの名前を、そもそも商標登録することは可能なのでしょうか。例えば「タオル」や「うちわ」を指定して「博多山笠」を商標登録すれば、他人が無断でこれを「タオル」や「うちわ」に表示して販売することができなくなります。
しかし、お祭り会場やその近所などで、そのお祭りの名前が書かれた「タオル」や「うちわ」が自由に販売できないというのは、地元業者や店舗にとって好ましい状況でしょうか。むしろ、お祭りの名前は公の財産として一人の商標権者による独占を認めるべきではない、という議論もありそうです。

この点、色々なお祭りの名前が、既に特許庁で商標登録されているという事実があります。一方、お祭りのおこなわれる地域周辺の業者に配慮し、そのお祭りの名前を商標権により独占させることは適当でない、として商標登録が拒絶された例もあります。
一概にお祭りの名前は商標登録できない、ということではないと思いますが、やはり公の財産として、お祭りの名前は自由に使用できた方がよい、という価値観は存在します。
切り分けは難しいですが、例えば上記「博多山笠」については、振興会の会長名義とのことですので、ある程度権利の正当性はあるかもしれません。また、振興会がお祭りの起源だとすれば、商標権も正当ということになりそうです。ただ、地域に根ざした公の財産という性格が強い場合には、やはり地元においては、そのお祭りの名前は自由に使えるという状況が好ましいように思われます。

なお、本件は、「タオル」に表された「博多山笠」の文字はそもそも商標なのか、あるいは単なる説明やデザインなのか、という根本的な問題も孕んでいます。「博多山笠」なるブランド名(商標)を理解させるというより、ふんどし姿との結び付きから、お祭りにちなんだ商品であることの説明、あるいはデザインにすぎないと理解されれば、そもそも商標として表示している訳ではなくなりますので、商標権の効力も及ばないことになります。
仮に、例えば、ハローキティが法被を着ていて、そこに「博多山笠」の文字が入っていた場合、それはさすがに商標というよりは、デザインの一部と見る人が多いのではないでしょうか。こうした点は、個々のことばの由来やそのことばに対する人々の理解、具体的な商品への表示の仕方など、様々な要素をもとに個別に判断がなされますが、微妙な判断を迫られるケースも出てきそうです。

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2012.3.23 中国商標問題

アップル社の「iPad」やマイケル・ジョーダンなど、中国での商標を巡る問題が噴出しています。このほか、外国の商標を正当権利者よりも先に登録してしまう、という剽窃的なケースも大変多くなっています。

問題は根本的なものを含め様々ありますが、剽窃的なケースに関しては、現在の中国における商標登録のシステムも実害の一因となっているように思われます。 中国では、出願時に料金を一括納付する仕組みですので、登録時にあらためて料金(登録料)を支払う必要がありません。 また、似たような先行する登録商標がある場合、日本ではこれとの重複を避けるための手続(例えば重複する指定商品の削除)を自らおこなわなければ登録に至りませんが、中国では仮に放っておいても自動的に重複しない範囲で登録が認められます。

外国企業にとっては、中国で先に登録されてしまう危険もありますが、たとえ先に登録を確保しておいても、あらかじめ幅広い範囲を登録しておかないと、後から同じ商標が間隙を縫うかたちで次々と簡便に登録される危険があります。中国での商標権の範囲は商品・サービス毎に細分化されていますので、本業に近い分野へ新たに乗り出そうとしても、他者に同一商標が登録されていたり、あるいはそのような紛らわしい分野に他者の登録が生ずることで、商標の価値が損なわれるということが起こります。

一旦出願を完了してしまえば、後は放っておいても登録となる制度は、現状を考えれば、その合理性よりも、商標問題をややこしくする一因という面が強調されるのではないでしょうか。本来は簡易な登録制度が望ましいですが、制度改善の余地があるように思われます。

これに限らず、日本の国会でも取り上げられるほど、中国の商標事情はひどく混乱している状態です(枝野経産相「プライドないのか」発言)。問題を未然に防ぐためには、やはり他者に先駆けて出願・登録をおこなってゆくことが、現状では最も有効な対応であるといえます。

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トヨタ自動車商標2011.12.20 商標刑事事件(その2) トヨタ自動車鍵事件

2011年5月13日の名古屋地裁の判決です。事案は、自動車の窃盗に用いられるイモビカッターなる装置を窃盗犯人に郵送し、当該犯行を容易にしたとして、窃盗幇助の罪により有罪判決が下されたケースです。 そして、これに加え、何ら権限がないのに、トヨタ自動車のロゴマークに類似する商標の入った鍵を譲渡のために120本所持していたとして、商標権侵害に基づく刑事責任も認められています。

ここでは商標権侵害の方に注目しますが、判決では、鍵の所持が、第6類「金属製金具」等を指定商品とする登録第4614126号(上掲)の商標権を侵害する行為として認定されています。この商標はトヨタ自動車のロゴマークよりなるものですが、これに類似する商標が鍵(おそらく自動車用の鍵)に付されていたということで、その所持が商標権侵害にあたると判断されました。「鍵」は上記「金属製金具」の概念に含まれますので、形としては立派な商標権侵害です。

ただ、本来、商標法上の商品は、市場において流通することが前提とされ、それでこそ商標に自他商品識別機能も認められますが、ここで被告人が所持していた鍵は、一般に商品として流通する性質のものだったのでしょうか。 窃盗事件絡みですので、おそらく不正な自動車のスペアキーのようなものを想像しますが、これをたくさん作って売るために所持していたような場合、それは通常の商品市場に出回る商品を所持していたことにはならないと思われます。

 例えば、偽ブランド品であれば、それは商品市場において一応流通するものですので、商標法上の商品といえますが、犯罪絡みのものでは、一般に市場から入手することはなく、密かに取引がおこなわれる性質のものも多いでしょう。 すなわち、本件の鍵が不正スペアキーとして窃盗に用いられるものであれば、これはそもそも市場に流通するものではなく、商標が機能する場面もありませんので、ここでは本来的な商標権の侵害は起こり得ないように思われます。

しかし、そこに商標が付されていることは確かですので、広い意味で何らかの商標の機能や価値が害されるとして、これを侵害と構成することも可能かもしれません。 また、鍵をコレクター向けの商品として販売したり、あるいは真正なスペアキーと偽って販売したりすれば、それは商標法上の商品となり得ますので、この場合は通常の商標権侵害として構成が可能です。 自動車会社は、おそらく「鍵」を権利範囲に含む第6類の商標登録を有しているのでしょうが、仮に不正スペアキーが作られた場合、当該登録には本件のように自動車窃盗を僅かながらも予防する効果があることになります。

なお、本件は窃盗幇助と商標権侵害の併合罪ですが、ここでは商標権侵害の方が重い刑とされているのも、関心の向く点です。

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2011.12.14 商標刑事事件(その1) デコ電事件

2011年9月、有名ブランドであるルイ・ヴィトンの偽シールを販売した容疑で、「デコ電」業者が逮捕されるという新聞等の報道がありました。

「デコ電」というのは、携帯電話やスマートフォンのケースあるいは本体をビーズなどで綺麗に装飾したもので、特に女性の間で人気があるようです。今回の事件は、その「デコ電」を扱う業者が、顧客から預かったスマートフォンのケースに、ルイ・ヴィトンやシャネルのロゴに似たデザインのシールを貼り付け、これを3150円で販売したところ、商標法違反容疑で逮捕された、というものです。あるいはシールを販売したという言い方をする報道もあり、いずれにせよここではシールが重要な要素となっているようです。

商標法上、「シール」や「ステッカー」は、第16類の「文房具類」に該当しますので、この分野で登録となっている商標の権利侵害として、今回の逮捕はおこなわれたと推測します。 ちなみに、第16類においては、「携帯電話機用装飾シール」という指定商品記載も、特許庁では採用されています。

ところで、「シール」を商品として販売する場合には、権利者に無断でこれをおこなえば第16類の商標権侵害となることはもちろんですが、「デコ電」の場合、これは端的に商品としての「シール」を販売していることになるのでしょうか。むしろ、商品販売というより、「携帯電話の装飾加工」のようなサービス提供にあたるもののようにも思われます。

たしかに、「シール」を商品として販売していたのかもしれませんが、その場合は、例えばルイ・ヴィトンであれば、有名な「LV」マークは「シール」の柄であって、本来的な識別標識としての商標としてそこに付されていたのか、という疑問も生じます。

こうして色々考えてゆくと難しい問題も出てくるかもしれませんが、単純に有名ブランドのロゴの入ったシールを無断で販売したり、それを使ってサービスをおこなったりすることは、やはり違法ということに結論付けられるのだと思われます。警察や裁判所は、本件のような場合も形式的に「シール」を販売したことにして、そこに商標権があれば、当該商標権の侵害としてこれを構成してゆくのではないでしょうか。

ルイ・ヴィトンに関していえば、「LV」マークなどは、「シール」を含む第16類でもしっかり商標登録をおこなっているようですので、「シール」に着目すれば、この商標権の侵害ということになります。一方、「携帯電話の装飾加工」というサービスは第40類に該当すると思われますが(「鍵の握り部分への装飾加工」が第40類で採用)、今回はこの分野にまでは商標権を有していなかったため、より簡単に「シール」の販売と構成して商標権侵害と判断されたのかもしれません。

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2010.8.31 プーマパロディ商標事件・・・判決

プーマパロディ商標プーマ商標をパロディ化した沖縄のシーサー商標に関する知財高裁の判決が7月12日にありました。

特許庁では、シーサー商標をプーマブランドの著名性にフリーライドするものであるとして、商標登録を取り消す異議決定を下しましたが、知財高裁中野コートは、大方の期待を裏切り、またしても特許庁の異議決定を取り消す旨の判決を下しました。パロディ商標は本当に許されるものでしょうか。

詳しくは、当サイト最新判決情報7月号をご覧下さい。皆さんのご意見をお待ちしています。

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2010.3.19 「守りたい人がいる」は、商標権侵害?

守りたい人がいる2010年3月18日付け毎日新聞に、「陸自の商標権を埼玉県警『侵害』」と題した、商標関係者の目を引く記事が大きく掲載されていました。
記事によると、「守りたい人がいる」は、陸上自衛隊が商標登録して居り、埼玉県警が警察官採用試験を告知するポスターとチラシに、「明日のために。未来のために。守りたい、『ひと』がいる。」と記載していたことが、陸自の商標権を侵害するおそれがあるので、埼玉県警は約1万枚のポスター等の回収を始めたとあります。

調べますと、確かに防衛庁陸上幕僚長の名義で、普通書体の「守りたい人がいる」と右掲のロゴがそれぞれ商標登録されていました(第4489386号、第4491514号)。
従って、毎日新聞の記事は本当のことを伝えているように見えますが、法律的にはすべて正しいということはできないようです。

まず、商標権は登録された指定商品や指定役務について登録商標を独占的に使用する権利ですが、陸自の登録は、以下の商品・役務について登録されています。
第9類  録音済みの磁気カード・磁気シート及び磁気テープ,映写フィルムほか
第14類 貴金属製き章,貴金属製バッジ
第16類 カレンダー,パンフレット,カード,手帳,ノートブック,便せん,封筒,名刺用紙ほか
第26類 服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。)
第35類 広告
第36類 前払式証票の発行
第42類 陸上自衛隊に関する印刷物に掲載された記事情報の提供

ですから、埼玉県警がこれらの指定商品の販売や有償でのサービスの提供について、「守りたい『ひと』がいる」を使用して営業を行なった場合には、陸自の商標権を侵害するおそれがあります。しかし、埼玉県警は、単に警察官採用試験のポスター等に、「守りたい『ひと』がいる」のフレーズを使用しただけで、警察業務は陸自の商標登録の権利範囲には含まれていませんので、そもそも商標権侵害ということは考えられません。

さらに、埼玉県警は、「守りたい『ひと』がいる」を警察官採用のポスター等の宣伝文句の一部として使用しただけであって、独立した「商標」として使用しているではありません。この点でも商標権侵害のおそれはないのです。

下記の「エコポイント」のケースもそうですが、商標権を侵害するかどうかは、その表示が「商標」として使用されているかどうかが鍵になりますので、この点をしっかりと見極める必要があります。

記事によりますと、埼玉県警は毎日新聞記者の指摘を受けて事実関係を把握したとありますが、そうしますと、毎日新聞の記者に商標の正しい知識がなかったことになります。新聞記者がそうなのですから、一般の人には難しい話題ですが、新聞記事やテレビでの報道に、しばしばこのような誤った報道が見られることは残念なことです。
なお宣伝文句としての使用、つまりキャッチフレーズやキャッチコピーが商標登録できるかどうかについては、当サイトの「審決データファイル」に審決例が掲載されていますので、参照してみてください。

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2010.3.19 エコポイント

省エネ家電に対して与えられるエコポイントに続いて住宅エコポイントの制度が始まりました。今回は、「エコポイント」と商標との関係について考えてみます。

エコポイントは、環境政策や景気刺激政策の一環として2009年5月から始まった政府主導の制度で、特定の家電製品(グリーン家電)を購入することでポイントを取得し、たまったポイントを後で他の商品などと交換することができる制度です。

特許庁のIPDLを調べますと、「エコポイント」「ECOPOINT」が第3類、第9類、11類、第25類、第35類、第38類、第41類などの商品区分やサービスについて商標登録されていますが、家電量販店などが「エコポイント」の名称を使って商品を販売することには問題がないのでしょうか。

今回始まった住宅エコポイント事務局<http://jutaku.eco-points.jp>のホームページには「商標について」とタイトルされたページがあり、そこには以下のような断り書きが掲載されています。

《「エコポイント」商標に関して●●●●氏が有する商標権(登録番号第4572535号)については、「エコポイントの活用による環境対応住宅普及推進事業」において、本事業を委託している一般財団法人環境パートナーシップ会議、並びに本件事業の事務局業務を受託し実施する住宅エコポイント事務局に対して、無償での使用許諾を頂いております。》

つまり、住宅エコポイント事務局では、今回の住宅エコポイントで使用される「エコポイント」を商標としての使用であると考えているように見受けられます。しかし、本当に商標としての使用なのでしょうか。

商標とは、自社の商品であるという出所を表示し、他社商品との識別のために使用するものですが、家電量販店で使用されている「エコポイント」は、特定の家電メーカーの製品であることを表示しているのでしょうか。あるいは量販店の小売りサービスについて使用されているのでしょうか。

住宅エコポイント事務局が引用する登録第4572535号は第35類「トレーディングスタンプの発行」を指定役務としていて、これには「ポイントカードの発行」と同じ類似群コード「35A02」が付けられています。ポイントカードもポイントがたまると他の商品と交換したり、代金の一部として充当することできますので、今回のエコポイントと良く似ています。

しかし、「エコポイント」の表示がされて販売されている家電製品は1社だけのものではありませんし、またグリーン家電を販売する量販店も1社だけではありません。 さらには、エコポイント事務局が製造あるいは販売する商品であることを表示しているわけでもありません。「エコポイント」の表示は、その家電製品を買うとポイントが与えられ、後日他の商品と交換できる制度の対象商品であることを表示しているに過ぎませんので、そこには出所表示機能や自他商品識別機能という「商標」としての機能が働く余地はまったくありません。

ですから「エコポイント」は商標として使用されているわけではありませんので、たとえ他人の登録商標があったとしても、商標権侵害になることはありませんし、無償であったとしても使用許諾を受ける必要もないのです。

また政府としても、「エコな商品に対して与えられるポイント」程度の記述的な意味合いで「エコポイント」と名付けたわけであって、そもそも商標としては意識していないのでしょうし、「エコポイント」が普及した現在では、誰かが商標出願しても識別性なしとか、あるいは政府の施策した商品と混同を生ずるおそれがある、さらには公序良俗違反というような理由で出願が拒絶される可能性が高いでしょう(商願2008-52303)。

このように、ある表示が商標かどうかは非常に難しい問題があり、過去にも巨峰事件をはじめ、清水の次郎長事件、通行手形事件、おもちゃの国事件、オールウェイズ・コカコーラ事件、十二支事件、花粉のど飴事件などたくさんの事件がありました。

ですから、キャンペーンなどで使用する言葉が他人の登録商標であった場合、問題になることを避けるため予め調査を行ない、商標権者の許可をとっておくことがありますが、皆が商標に関する正しい知識を持つことができるようになりますと、そのような問題もなくなって行くのでしょう。

なお「商標としての使用」については、弁理士小谷武著「商標教室」や「最新判例からみる商標法の実務」(青林書院)に詳しいので是非参照してみてください。

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2009.12.17 プーマパロディ商標事件・・・その後

プーマパロディ当サイト「最新判決情報」2月に紹介しましたプーマのパロディ商標に関する続報です。
2月の判決では、特許庁の異議決定(2007-900349)が、パロディ商標「SHI-SA(図形)」(右掲上)と本家プーマ商標(右掲中)とが類似するとして法4-1-11号を適用したため、知財高裁ではこれが否定され非類似の商標であるとして異議決定が取り消されました。
そのため、特許庁では再度審理が行なわれた結果、この度パロディ商標の登録を取り消す旨の決定が本年10月29日付けで下されました。今回適用した条文は、法4-1-11号、4-1-15号そして4-1-19号です。

まず法4-1-11号ですが、審判部により登録第711054号商標「シーサー(ロゴ)」(右掲下)が新たに取消理由として通知されています。パロディ商標は、プーマのロゴを沖縄の「シーサー」風にパロディ化したものですし、2月の判決でも「シーサー」であると認定されていますので、今回引用された登録商標「シーサー」との称呼上の類似性を否定することはできないでしょう。

そしてパロディの点について、法4-1-15号を適用するにあたり審決では、「広義の混同を生ずるおそれ」、つまり「ある者と何らかの関係にある者の業務に係る商品であると誤信するおそれ」について審理しています。この点に関して、当事務所が代理する異議申立人プーマ社側では、審判部を支援するため本年3月6日に上申書を提出し、パロディ商標に関する証拠を追加提出しました。 異議決定では、当方が提出した証拠の中から、商標権者自身が言っていることとして、「サイズ&カラー豊富なPUMA?いえ、シーサーのパロディチビTです。(甲第35号証)」、「まずは『SHISA』。こちらは沖縄のシーザーをPUMA風味に仕立てたものです。(甲第36号証)」、「みなさん このジャンピングシーサーって単なるプーマのパクリ。またはプーマのパロディーバージョンだと思っていませんか????(甲第38号証)」のように記載されている点を指摘し、広義の混同を生ずるおそれがあると判断しています。

さらに異議決定では、本件商標が法4-1-15号に該当しない場合を考慮して、速やかな解決に資するためとして同19号についても判断しています。
まず19号の趣旨として異議決定は、「主として、外国で周知な商標について外国での所有者に無断で不正の目的をもってなされる出願・登録を排除すること、さらには、全国的に著名な商標について出所の混同のおそれがなくても出所表示機能の希釈化から保護することを目的とするものである」と規定しています。

そして、類否判断に当っては、11号と19号とでは判断基準に違いがあることを指摘しています。すなわち、11号は混同の可能性が重視されるのに対して、19号の適用に際しては、周知著名な商標の事業主との一対一の対応関係を崩し、希釈化を引き起こすような程度に類似しているか否か、すなわち、容易に他人の周知著名商標を連想(想起)させるほど類似しているか否かを検討すべきものであり、その点本件商標はプーマ商標を連想(想起)させるほどに類似すると認定しています。

「不正の目的」についても、商標権者はプーマ商標の周知著名性を否定していませんので、商標権者はこのことを十分に認識していながら、あえて本件商標の出願をしたものであり、上記の商標権者が自ら言っていることに鑑みれば、プーマ商標の著名性を不当に利用していると指弾し、19号に該当すると結論しています。

しかし、商標権者は今回の異議決定にも納得せず、再度知財高裁に異議決定取消訴訟を提起しています。争点は3つの法条適用の可否ですが、もし11号だけが判断されて請求が棄却されますと、パロディについての判断が行なわれない懸念がありますが、観光地に氾濫するパロディ商品が適法なものか否かについて、是非とも司法判断が下されることを期待しています。

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2009.12.15 サントリー黒烏龍茶事件・・・その後

黒烏龍茶東京地裁平成20年12月26日判決の黒烏龍茶事件(当サイト「取扱裁判例の紹介」参照)では、ペットボトルに表示された「黒烏龍茶」ラベルの類似標章が問題となりましたが、原告サントリーでは、標準文字から成る商標「黒烏龍茶」を出願して居り、これに関する拒絶不服審判の審決が本年10月30日付け審決公報に掲載されていましたので紹介します(審判番号不服2008-7368))。なお商標「黒烏龍」についても同趣旨の審決が下されています(不服2008-8753)。

指定商品は第29, 30, 31,32類の非常に多岐にわたっていますが、原査定では、本願商標「黒烏龍茶」について、「烏龍茶は黒さが特徴のお茶である。中国には、もともと、『黒く濃い烏龍茶(ウーロン茶)』を飲む習慣があり、近年においては、健康茶のひとつとして、『黒烏龍茶』が普通に使用されていることからすれば、これを本願指定商品に使用したときは、単に『黒烏龍茶(黒ウーロン茶)を使用してなる商品』であることを表わしたもの」であるとして、法3-1-3号及び4-1-16号に該当するとして出願を拒絶しました。

これに対する不服審判ですが、ここでは職権による証拠調べが行なわれ、各種ウェブサイトにおける「黒」と「烏龍茶(ウーロン茶)」の使用例が審判部により指摘されました。これに対してサントリー側では、「黒烏龍茶」の語は同社が創作した造語である。証拠調べで引用されたウェブサイトの記載は、サントリーの商品やその説明文を模倣したものであり、「黒烏龍茶」が品質表示であることを証明するものではない。また、「黒烏龍茶」は著名であり、識別力を有しているから、これを他の商品に使用したとしても、品質の誤認は生じないという旨の意見書を提出しています。

これに対して審決では、HPなどでサントリーが自ら宣伝しているところの、サントリーの商品の特徴はウーロン茶重合ポリフェノールを豊富に含んで居り、これが効能成分であると同時に、ウーロン茶の茶色をつくっている色素成分であり、これを豊富に含むことから通常のウーロン茶よりも濃い色に見えることから「黒烏龍茶」と命名し、色の黒さが商品の一番の特徴であることから真っ黒のパッケージを採用したなどという一連の説明箇所を引用し、「黒烏龍茶」の名称について、サントリー自身も烏龍茶の色が濃く黒っぽく見えることから、その色彩を表現するものとして名付けたものであると認定しました。

そして、他社のウェブサイトでの使用例から、「黒烏龍」「黒烏龍茶」「黒ウーロン茶」等の文字は、食品・飲料業界の需要者の間においては、「黒い(濃い色の)烏龍茶」程度の意味で商品の品質を表示するものとして使用されているので、これらの事実に照らせば、本願商標をその指定商品中、「ウーロン茶ポリフェノールを原料の一部とする粒状・顆粒状・粉末状・カプセル状・液状・棒状の加工食品」に使用しても、取引者、需要者は、商品の品質、原料を表示したと理解するにとどまり、自他商品の識別標識とは認識されず、またそれ以外の商品について使用するときは、商品の品質について誤認を生ずるおそれがあると判断しました(法3-1-3号、4-1-16号)。

またサントリー側では、東京地裁事件を引用して係争中である旨を主張していましたが、審決では、「黒烏龍茶」は、商品の普通名詞に「濃くて黒っぽい」との茶の色を意味する形容詞を付加しただけであるので、特殊な造語として、高い識別力を持つとまではいえず、それのみが原告商品表示の要部であるともいえないとの判決の判示部分を引用して、審決の妥当性を示しています。

3条2項の使用による識別性について審決は、サントリーの商品は相当程度知られているものの、商品に使用されている商標は、別掲のとおり、黒地ラベルの上下に模様を施し、中央の縦書きされた「黒烏龍茶」の文字の右上部に「サントリー」及び下部に「SUNTORY」の文字等を書してなる構成のものとして広く知られているので、標準文字で出願された本願商標とは同一性がなく、使用商品と本願の指定商品とも同一ではないので、3条2項の要件を具備しないとして、サントリー側の主張はすべて斥けられています。商標と商品の同一性は3条2項主張の基本要件ですので当然の結論でしょう。

このように、東京地裁判決と今回の審決とを総合しますと、「黒烏龍茶」の表示自体は識別力がなく、誰でも自由に使用することができますが、デザイン構成として、サントリーの商品と類似するようなものは、不正競争防止法違反に問われるおそれがあるということになるでしょう。

なおこれらの商標出願のデータは、IPDLからすでに削除されていますので、サントリー側は審決に服従して審決取消訴訟を提起しなかったことになります。

最後に自戒として、東京地裁事件において我々被告側は、両者商品の間に出所混同のおそれがないことを示すため、直ぐに飲めるサントリーのペットボトル飲料と、煮出して飲む当方被告茶葉商品とでは販売されているコーナーが違うことを主張しました。現にスーパーなどではペットボトル商品とティーバッグなどの茶葉商品とは全く異なるコーナーで販売されているからです。ところが、スーパーに行ってみましたら、サントリーの「伊右衛門」や伊藤園の「おーいお茶」などのようにヒットしたペットボトル飲料については、ほぼ同じデザインで同じ名称の茶葉商品が売られていたのでした。つまり、ペットボトルと茶葉とが同じ商標で販売されているという事実があることになりますので、もしこの点にサントリー側が気付きますと、我々被告側の主張は簡単に否定されることになってしまいます。しかし、サントリー側では、当方の主張を確かめるべく、スーパーに出向くことまではしなかったようであり、幸いにも原告側からはこのような指摘はまったくありませんでした。商標は使用されるものである以上、現場に足を運ぶことが重要ですが、このことは商標を考える原点ですので、自戒として我々商標に携わる者は忘れないようにしたいものです。

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2009.10.22 「大隈重信」・・・歴史上の人物名は公序良俗違反?

本年2月26日のトピックス・ニュースで、歴史上の人物名からなる商標登録出願について、その登録に問題があることを指摘しましたが、今回10月21日付けで改正された商標審査便覧において、「歴史上の人物名(周知・著名な故人の人物名)からなる商標登録出願の取扱いついて」と題して、以下の事情を勘案して、歴史上の人物名からなる商標が公序良俗違反として商標法4-1-7号に該当するか否かが審査されるようになりました。

(1) 当該歴史上の人物の周知・著名性
(2) 当該歴史上の人物名に対する国民又は地域住民の認識
(3) 当該歴史上の人物名の利用状況
(4) 当該歴史上の人物名の利用状況と指定商品・役務との関係
(5) 出願の経緯・目的・理由
(6) 当該歴史上の人物と出願人との関係

このようにして、親しまれた歴史上の人物名からなる商標の出願が、むやみに商標登録されたりするようなことがなくなり、特許庁の審査が国民の感情に近いものとなったことは喜ばしいことです。

詳しくは、特許庁サイトをご覧下さい。

http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/syouhyoubin/42_107_04.pdf

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2009.8.4 「京料理」は地域ブランドか?

京料理地域ブランドすなわち地域団体商標に関する審決例はまだ少ないようですが、最新の7月31日発行の審決公報に、考え方の参考となる審決が掲載されていましたのでご紹介します。

出願された商標は、標準文字で書かれた「京料理」で、第43類「京都における日本料理を主とする飲食物の提供」を指定役務としています。地域団体商標の構成要件は、「地域の名称+商品・役務の普通名称」から成る文字商標ですので、標準文字商標「京料理」はこれに該当することになります。地域団体商標は組合等の団体が出願人となりますので、商標「京料理」も京都府料理生活衛生同業組合によって出願されています。
地域団体商標のもう1つの要件は、それが需要者の間に広く認識されていること、すなわち周知性があることですが、本件の審査段階では、出願人やその構成員以外の者が日本各地において「京料理」の文字を使用して飲食物の提供を行っているから、出願人やその構成員が提供する役務を表示するものとして需要者に広く認識されているとは認められないとして、出願は拒絶されました。これを不服としたのが本件審判事件(2008-14424)です。

審判で請求人(出願人)は、京料理展示大会というイベントの模様を示す資料や京料理に関する書籍、新聞など多数の資料を提出しましたが、審決では、それらのイベントは、請求人とは異なる京都料理組合が主催したものであり、京都府寿司環境衛生同業組合、京都府、京都観光連盟、京都市など請求人以外の団体も協賛していて、参加者も請求人の組合員名簿に掲載されていない事業者も含まれているなどの理由から、商標「京料理」が請求人(出願人)自身の役務を表わすものとして広く知られているとは認められないと判断されました。
また周知性は、商標の使用開始時期、使用期間、使用地域、営業規模(店舗数、売上等、宣伝広告の方法及び回数)などによって証明することが必要ですが、これらの資料は提出されませんでした。
逆に、審決では、東京都、芦屋市、名古屋市、さいたま市、堺市など各地における京料理店の存在がホームページアドレスによって示されました。この点について、請求人側は、それらの店舗は「京料理」の名称を無断で使用するものであると反論しましたが、審決では、「京料理」の文字を規制する法律等もないとして斥けています。

このように、「京料理」の名称は、特定の団体の出所を表示する商標としては認識されていないとして出願が拒絶された訳ですが、結論としては妥当なものでしょう。しかし、そもそもレストランにおいて提供される料理の種類名は地域ブランドとして馴染むものでしょうか。
確かに法律上は、「地域の名称と役務の普通名称」から成る地域ブランドも想定されて居り、特許庁の解説資料では、その「役務」の代表として「温泉」が挙げられています。温泉は当然その土地でしかホテルやレストランサービスの提供ができませんので、地域ブランドとして何ら問題はないでしょう。

特許庁の資料によりますと、本年7月14日現在、433件の地域団体商標が登録査定とされていますが、サービスマークでは、「湯河原温泉」など温泉の登録例のほか、第43類「飲食物の提供」に関する商標「横濱中華街」や「鴨川納涼床」がある程度のようです。これらの商標は当然横浜や京都の一定の地域でしか提供されませんので、地域ブランドでしょう。
しかし、本件のような「京料理」は、京都でなければ食べられないというものではなく、日本のどこの土地でも提供することができるサービスですので、京都の団体が独占できるような性質のサービスではありません。もちろん、その場所に行かなければ食べられないような料理もあるとしますと、地域ブランドになるのかも知れませんが、食材の移動が可能な料理であれば、やはり特定の地域での独占使用は難しいことになります。

仮に、そのような料理名が登録されたとしましても、他の土地でその食材を使用した料理であれば、他の地域のレストランで提供する場合でも、その料理名を商標として使用することができます(商標法26条1項3号商標権の効力の及ばない範囲)。
ですから、地域ブランドとして適さないようなサービスマークもあるようですので、考えてみると良いでしょう。

なお、商標審査基準では、地域団体商標でいう「周知性」は、全国的である必要はなく、隣接都道府県など一定範囲の需要者に知られていればよいとされています。この周知性の範囲は、拒絶理由である法4条1項10項の周知性と同じであると解釈されていますので、登録された地域団体商標「沖縄そば」に類似する商標「明星 沖縄そば」の出願は同10号によって拒絶されています(不服2007-1479)。
また登録された地域団体商標「比内地鶏」(第29類)に類似する商標「ひない地鶏の卵(鶏の図形)」(第30類)の出願は、法4条1項15号によって拒絶されています(不服2007-25509)。

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2009.6.8 カラー談義・・・「ブラック」や「黒」も登録商標!?

クレヨン審決データファイルの「色彩を含む商標の識別性と類似性」に掲載された沢山の審決例をご覧のように、特許庁の審査例では、「レッド」や「ブルー」「グリーン」など色彩を表わす言葉を商標出願しても、それらは商品の色彩を表わすだけに過ぎないとして、法3条1項3号によって拒絶されたり、あるいは商標の類否判断の際に除外されてしまいます。

また「カラー」の語も、商品が着色されていることを示すと判断された場合には識別力を欠くと判断されますし、「色調」を意味する「トーン(TONE)」の語も問題になっています。「ゴールド」は、色彩表示というだけではなく、「高級な」という等級表示としても拒絶理由となります。

同じように、「レモン」は「レモンの香り」という意味のほか、「レモンイエロー」という色彩表示にもなりますし、「栗」を意味する「マロン」も場合によって「栗色」となります。「バイオレット」も「すみれの花」だけではなく、「すみれ色」となることがあり、「ワイン」は「ワインカラー」かも知れません。

それでは、例えば商品「織物」について商標「日本の色」を出願したら登録されるでしょうか。「日本の色」は国名と「色」ですので、何となく商標登録を許して1社に独占させるのは好ましくないような気がします。しかし、「日本の色」とは一体どのような色でしょうか。審査官は、<織物などの施された日本独特の染色を直感させる>といって出願を拒絶しましたが、審判では、「日本の色」は<特定の色彩、染色等を表示するものとして、一般に理解されていない>として、登録を認めました(S58審判13716)。

塗料や壁紙など、沢山のカラーやデザインパターンがあり、それらに名前をつけなければならない商品があります。もちろん、「グリーン」や「ピンク」のような単純な色彩名であれば問題ありませんが、たとえば「海の青さ」を意味する一般的な語だと思って「アクアブルー」と名付けたとします。もちろん、「グリーン」や「ピンク」という他の商品と同じ位置付けで使用していますので、「アクアブルー」は商標ではないという考え方もあります。しかし、特許庁では、当該商品の分野で「アクアブルー」が色彩表示として使用されているという事実がない限り商標登録を認めますので、自分で単なる色彩表示語というつもりで使用していたとしても、他社から権利侵害といわれるおそれがあります。

最近の審決では、色彩を表示するような商標であっても、以下のように当該指定商品や役務との関係を具体的に判断して、商標登録を認めるようになりつつあります。

商標 クラス(主な商品役務) 審判番号
ブラック 9 (ゲームプログラム) 2008-1174
33 (焼酎) 2001-14300
BLUE 10 (医療用機器) 2006-28211
ゴールド 45 (ファッション情報の提供) 2005-8446
ゴールド 41 (ゴルフの興行の開催) 2005-18633
SILVER 34 (タバコ) 2004-20428
グリーンミックス 19 (合成建築専用材料) 2004-13245
スーパーカラー 3 (化粧品) H11-21021

このように、色彩を表わす文字商標でも判断が非常に難しいのですが、現在商標法改正では、色彩商標として、色自体を商標登録することの可否が議論されています。完全に同じ色彩を再現することは難しいので出願商標の特定の問題がありますし、またそれらの識別性や類似性の判断はどのようにするのでしょうか。注目して行くことになります。

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2009.3.27 寒梅談議

日本酒お酒のお好きな方であれば、「寒梅」について自分はよく知っていると思っている方も多いでしょう。「寒梅」とはもちろん石本酒造(新潟市)の「越の寒梅」であり、登録商標(第872695号)です。しかし、それより以前の明治44年に登録された寒梅酒造(久喜市)の商標「寒梅」(第45256号)もあるのです。こちらも沢山の賞を受賞していますので、とても美味しいお酒のようです。

そして「寒梅」人気が沸騰し、「三重乃寒梅」「京乃寒梅」「伊勢の寒梅」「筑後の寒梅」「上州の寒梅」「伏見の寒梅」「箱根寒梅」など各地の地名が付加された「寒梅」が非類似の商標として並存登録されています。

「寒梅」は「越の寒梅」が有名ですので、これらの「寒梅」の語を含む商標は、「越の寒梅」と混同を生ずるおそれがあるとして登録できない可能性があります。しかし、一方で寒梅酒造の登録商標「寒梅」もあります。このような場合、どのように判断すればよいのでしょう。

筑後の寒梅事件(H11(行ケ)240)で、東京高裁は次のように言っています。

<「日本酒」について、「秋田の酒」「新潟の酒」のように、産地と結びついた表現が頻繁に用いられている。需要者らは、一般に産地によって日本酒の味や品質に相違があると認識しているので、地名部分は需要者らの注意を引く部分として商標の要部となり得るものである。したがって、「筑後の寒梅」は「寒梅」とは非類似の商標である。>

通常、地名は商品の産地表示となる場合、その部分は除外されて類否判断がされるのですが、日本酒に関しては産地名が重要な要素として商標全体として類否判断されることが分かります。
地名商標については、審決データファイルに参考審決例が掲載されています。また別の寒梅事件のレポートが判決研究会レポート集に掲載されていますので、参照してみて下さい。

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2009.2.26 「大隈重信」・・・歴史上の人物も商標登録できる!?

早稲田大学の創始者である「大隈重信」の名前が商標登録出願され(2008-52356)、これに対して早稲田大学が反発しているとして話題になっています。果たして、「大隈重信」のような歴史的な人物の名前は商標登録できるのでしょうか。

いうまでもなく商標出願は法律に基づいて審査され、拒絶理由を規定した商標法3条や4条に該当しない限り、審査官は出願を拒絶することができないため商標登録されてしまいます。

歴史上の人物の名前の場合、公的な理由である法4条1項7号の公序良俗違反の該当性が問題になります。これまでは、この点の基準があいまいであったため、過去には「福沢諭吉」(第605561号)や「武田信玄」(第605616号外)なども商標登録されていました。

しかし常識的な疑問として、「福沢諭吉まんじゅう」などが商標登録されて1社が独占的に使用しても良いものなのでしょうか。このようなネーミングをつけた場合、商品に一種の信頼感を与えますし、誰でも知っている名前ですので商品を宣伝することも楽になります。つまり、このような商標はその故人の業績にフリーライド(ただ乗り)していることになります。

しかし、特許庁の審決例をみますと、過去に「上杉謙信」(不服2006-12827)や「真田幸村」(不服2006-12828)、「吉田松陰」(不服2006-12832)、「ダ・ヴィンチ」(不服2002-4631)、「島崎藤村」(H9審判19954)など多数の商標が審査段階で拒絶され、審判に進んで登録が認められています。ですから、歴史上の人物名の商標登録に賛成する弁理士は、このような審決例を根拠としているようです。

しかし、問題はもっと根本的なところから考えるべきではないでしょうか。最近では歴史上の人物名の商標出願が頻繁となり、「福沢諭吉」の登録を無効とした審決(2004-89021)を始め、登録を認めないとする審決が多数下されるようになりました。

そのため、特許庁ではこの点を商標審査基準に明文化するような動きがあり、日本商標協会にもコメントが求められるようになりました。

しかし、商標協会のコメントは、第7号公序良俗違反の該当性だけについて検討し、根本的な問題について、つまり歴史上の人物の名前を商標登録し、一私人の独占使用に任せてもよいかどうかという観点からは考えていなかったようです。

検討の結果、もしそのような商標登録が妥当でないならば、第7号の公序良俗の規定の適用が妥当かどうか、もし7号が問題あるのであれば立法的な解決が必要か、という順番に議論を突き詰めて行くべきでないでしょうか。

冒頭の「大隈重信」の出願では、出願人は、「歴史上の偉人で登録済みの商標を調べた結果、大隈重信が出願されていなかったので出願した」と言っていたようでしたが、「騒がれてまで出願する必要はないと思った」として、その後、出願を取り下げることにしたようです。

歴史上の人物名の商標登録についても、特許庁や我々弁理士の感覚が一般の人達の感覚とずれて行ってしまうことが心配されます。

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2009.2.20 ペットとペット用品の小売り類似群

猫類似商品役務審査基準では、「ペット(愛玩動物)の小売り」として「35K21(33D01)」の類似群コードが付けられています。しかし、ペットショップでは、通常ペット自体のほか、ペットフードやペット用被服、首輪、リード、ケージ、食器、トイレの砂、シャンプー、トリートメントなど様々なペット用品も一緒に売られています。

もし、これらの商品の小売りを指定しますと、現在の類似商品役務の関係では、「ペットフード」が「35K11(33B01)」であることが分かりますが、その他のペット用品やペット用化粧品についての類似群コードが分かりません。

商品分類の考え方でいいますと、いわゆる「ペット用品」は「19B33」、「ペット用シャンプー・歯磨き・リンス・芳香剤」は「04A01,B01,C01,D02」となります。

そうしますと、これらのペット関連商品すべての小売りサービスとなりますと、類似群コードだけで、7つとなり、1つの出願で他の役務を指定することが出来なくなります。

しかし、このような判断は現実とかけ離れているとは思いませんか。たとえば、「ペットフード」の類似群コード「35K11(33B01)」ですが、審査基準に明記されていますように、これは「農耕用品の小売り」のくくりとなっています。つまり、養鶏場や養豚場などで業として使用する「飼料」を想定していることになります。確かに、商品分類では、「飼料」も「ペットフード」も同一の扱いですが、こと小売りに関しては、ペットショップで鶏や豚などの業務用の飼料は売っていませんので、当然に区別されて然るべきことになります。

当事務所の出願(2007-36426)に対しても、上記のペットやペット用品は業種が異なり、類似の関係にないとの拒絶理由通知が発せられました。そこで当事務所ではペット業界の実情について証拠を示して説明した意見書を提出しましたところ、意見書提出後、7ヶ月間の審理の後、当事務所の主張が認められ、ペット・ペット用品が同じ業種で類似の関係があるとして登録された次第です。将来の類似商品役務審査基準の改訂において、以上の点が明記されることを望んでいます。

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2009.2.20 倒産企業・合併企業のブランドの行方

未曾有の不況といわれる現在、沢山の有名企業が倒産に追い込まれています。そして今から12年前の1997年、証券会社の名門である山一證券の倒産は世間を驚かせました。山一證券は自主廃業しましたが、このような法人主体のなくなった企業ブランドを、12年後の現在、誰かが商標登録出願したら登録されるのでしょうか。

保護されるべき主体はありませんので、商標法4条1項8号の適用はありませんし、現在営業は行なわれていませんので出所の混同が生ずる現実的なおそれはありません。もちろん、商標登録は消滅し、すでに1年以上経過していますので、4条1項11号や13号は適用されません。

しかし、例えば「山一證券」が誰かによって出願され使用された場合、一般の人はその「山一證券」を使用する人や企業が、元の山一證券と何らかの関係があるのであろうと推測するでしょう。元社長や元社員が出願した場合はどうでしょうか。しかし、「山一證券」のブランドは元社長や元社員という個人的な財産ではありませんので、当然に登録が許されて良いというものでもありません。

この点を考える材料として、「mosrite」エレキギターの判決(東高判H14(行ケ)497)があります。この事件は、商標法51条1項の取消審判に関する事案ですが、「mosrite」の製作者であるアメリカ企業は消滅し、日本の商標権も消滅していました。しかし、「mosrite」の名前はベンチャーズのギターとして現在も広く知られています。判決では、次のように判断しています。以下要約です。

<周知商標に係る商標権が期間満了により消滅したとしても、それによって、直ちに、当該商標の周知性が失われるものではない。したがって、他人の商標権が消滅した場合でもあっても、商標権者が他人の商標と類似する商標を使用したとすれば、他人の商品と混同が生ずるというべきである。また、「mosrite」のギターと同様の品質であるかのように、商品の品質について誤認を生ずるおそれがある。>

このように、周知商標を使用する主体がいなくなったとしても、周知性は社会に残っていますので、「山一證券」が出願された場合には、商標法4条1項10号、15号、そして場合によって19号に該当するとして拒絶されることになるでしょう。

テレビで放映されていましたが、実際、商標「山一證券」が元社員によって出願されました(2007-28889)。元社員は山一證券の再興を願って出願したといっていました。

しかし、残念ながら元社員の出願は拒絶されてしまいました。拒絶の理由は法4条1項7号の公序良俗違反でした。元山一證券と誤認混同を生ずるおそれがあるので、商取引の秩序を害するおそれがあることを理由として挙げています。果たして、これが公序良俗違反といえるかは、議論があるところではないでしょうか。

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2009.2.20 合併企業のブランドの使用

企業合併され、その後の新会社によっては使用されなくなった企業の登録商標について興味深い審決があります。

三菱銀行と合併した旧東京銀行の登録商標「BANK OF TOKYO」(第36類)に対して、他の銀行から不使用取消審判が請求されました(2000-31251)。合併があったのは1996年4月であり、不使用取消審判は2000年10月ですので、旧東京銀行の登録商標は合併後3年以上使用されなかったことになります。

そのため、不使用取消審判が請求されたのですが、継続して提供される銀行業務という特質上、一切の業務は承継人である東京三菱銀行に引き継がれ、旧東京銀行時代に発行された預金通帳やキャッシュカードがそのまま顧客によって使用されていました。もちろん、旧東京銀行名で発行された割引債も、そのまま承継人である東京三菱銀行によって償還されていました。

この点をとらえ、審決では現在の商標権者である東京三菱銀行が、登録商標「BANK OF TOKYO」を「役務の提供の用に供する物(預金通帳、キャッシュカードなど)」に使用していたとして取消審判請求を不成立と判断しました。

この審決の中で、「たとえ、旧東京銀行が消滅しても、同行が築き上げてきた業務上の信用(グッドウィル)はたやすく失われるものではなく」といっていますので、現存しなくなった企業ブランドであっても、強く保護すべきであるという特許庁の姿勢が窺われます。そして、東京三菱銀行は、さらに合併が進み、今では三菱東京UFJ銀行へと名称が変わっています。

最後に質問です。あるゲーム機メーカーA社が、ゲーム機を製造販売した後で倒産し、A社が販売した機械がその後もゲームセンターで使用されているとします。ゲームセンターのゲーム機に表示されたA社の商標は、現在もA社の商標として使用されていると判断されるのでしょうか。考えてみて下さい。

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2009.2.20 「BIZ」は国際機関の標章?

商標法4条1項3号では、国際機関を表示する標章であって、経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の商標の登録は禁止されています。「BIZ」も通貨安定のための国際協力機関である国際決済銀行の略称として1994年に指定されています。

これにより、第6類ほかを指定した出願商標「Biz/ビズ」がこの適用を受けて拒絶されました(不服2000-1321)。

法4条1項3号の適用を受ける商標は、国際機関の標章と同一又は類似のものですので、日本郵政公社が2002年に出願した商標「BIZPOST(図形)」(第16類)も法4条1項3号によって一旦は拒絶されましたが、一体不可分の商標であるので「BIZ」とは非類似の商標であるとして審判で登録が認められています(不服2003-13863)。

しかし、現在「BIZ」の語を見て思い浮かべるのでは、環境対策を目的に2005年から始められた「クールBIZ」ではないでしょうか。「BIZ」は「Business」の略語ですので、商標として非常に使い勝手の良いことばです。そのため、「BIZ」の語を含むたくさんの商標が出願されるようになりました。

当事務所でも「BIZ」の語を含む第36類の商標出願が、法4条1項3号に該当するとして拒絶理由通知を受けたことがありますが、当事務所では、法4条1項3号の立法趣旨を説明し、本願商標中の「BIZ」は「Business」を意味しているので国際決済機関を想起することはないという意見書を提出して登録されています。

ちなみに、国際機関の「BIZ」はドイツ語表記の略称であり、英語表記の「BIS」も国際機関の標章として指定されていますが、今ではたくさんの「BIZ」を含む商標が登録されています。国際機関の指定という固定的な拒絶理由と、時代の流れで生まれた語とがたまたま同じになった結果生じた話題です。ですから、特許庁に対しては、時代と共に変遷して行く商標の審査に当っては、時代の流れをよく見て柔軟に運用されるよう期待しています。

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2009.2.20 ブルーレイディスク vs. HD DVD

ディスクイメージDVDの新規格は、ソニー、パナソニック、シャープなどの「ブルーレイディスク(BD)」に決まりましたが、それまでに、東芝が主導してきた「HD DVD」との間で規格争いが続けられていました。

BDに決まった理由は、BDの方が容量が大きいこと、家電メーカーの大半がBD側についたこと、BDソフトの方が多くなったことなどが挙げられています。しかし、我々には技術的なことやマーケットのことは分かりません。そこで、ネーミングの面からアプローチして見たいと思います。

まず聞いた感じの印象ですが、どちらの方が感じ良いでしょうか。「ブルーレイディスク」の方は、「青い光のディスク」を意味しますので、とても分かりやすいですし、「ブルー」という言葉が持つ冷たく透明な印象が技術的に洗練された感じを与えます。

一方、「HD DVD」ですが、「HD」は「High-Definition(高解像度)」の略ですが、むしろ「HD」は「ハードディスク」の意味の方が知られていますので、全体として「ハードディスクDVD」と理解され、そのまんまという印象で人を引き付けるものがありません。

ですから、ネーミングという観点からだけでも、勝負あったという感じがしていました。

次に、商標登録の可能性ですが、まず「HD DVD」の方は、「HD」は「高解像度」や「ハードディスク」を意味すると理解され、これに商品の普通名称である「DVD」が結合しただけですので、全体としても識別性を欠くとして商標登録は難しいようです。ただし、「HDDVD」のように一連一体で表記した場合には、新しい造語として商標登録されます(第2670712号、権利者現パナソニック社)。

一方、「ブルーレイディスク」の方も、「青い光のディスク」を意味しますので、そのままでは商標登録ができません。そこで、BD陣営は考えました。「Blue」の最後の「e」を取って、「Blu-Ray」と表記することにしたのでした。「Blu」では「青色」を意味しませんので、日本では「Blu-Ray」は特段の意味のない造語商標として商標登録を受けることができます。もちろん、「Blu」は「Blue」を暗示させますが、商標登録できないのは商品の品質をそのまま記述する商標であって、単に暗示的に留まる商標は登録することができるのです。

商標「Bluray Disc」はもともとソニーの登録商標(第4622587号)でしたので、商標「BLU-RAY DISC」やそのロゴマークは、ソニーが商標登録(第4668108号、第4929075号)し、商標登録された後に、規格策定団体である米国の「Blu-ray Disc Association」に商標権が譲渡されています。

そこで次に、このように規格策定団体が商標登録し、これを採用する企業各社が同時に使用する機能の名称が、特定の出所を表わす商標と認められるのかどうかという問題が出てきますが、この点については、後日ということに致しましょう。

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